死地帝国記
 

第五話「陛下、お仕置きされる」

コンコン

「兄上。ソラヴィスでございます。」
「ああ、入れ。どうしたんだ?」
「少し相談が御座いまして。」
「むっ、構わないぞ。」

「兄上。何故兄上はあんなことをゲイトに命じたのですか?」
「……」
「また無視するんですね……」
「…………」

「はぁ……。兄上、私が本気で怒った時怒りの矛先はどういう運命をたどるか、知っていますか?」

「……」

「貴方様に向かうんですよ……アルヴィエ=フォン=デスグラード」ギロッ
「……ひっ……。ま、待て、話を聞いてくれ……」ガタブルガクガク
「はぁ……」

「うぅうう……すまない……。ゲイトは頭が良いし、行動力もあるし、何より強い。だからあいつなら何とかしてくれると思って……。」
「そういうことではありません!仮にも一国家の頂点に立つ者がおふざけで命令を下すなど!臣下に対する侮辱だと思わないのですか?!」
「っ……だが……」

「言い訳は無用!兄上!あなたには失望しました!この事はアルカディア様にご報告させていただきます!」
「うっ……それはまずいっ……」
「はい。今さら気付いても遅いですよ?覚悟していて下さい。」
「そ、それだけは、どうかっ……」
「では、私は部屋に戻ります。失礼致します。」
「ぐっ……くっ……。ソラヴィス……お前ならこのノリを分かってくれると思っていたのだが……。」



――皇帝執務室

「アル。お前は一体何をしておる?」
「……申し訳ございませんでした。」

アルカディアはソラヴィスから話を聞きアルヴィエを説教していた。

「そうか。まさか自分の子がこんな事を考えるとはな。」
「はい。……面目次第もありません。」
「よい。しかし、ソラとゲイト君を怒らせてしまっては大変じゃぞ?」
「はい……わかっております。」
「ならば良し。お主がしっかりソラとゲイト君の支えになってやるのが、今のお主に出来る一番の仕事だ。いいな?」
「勿論です。我が弟とその息子ですから。」
「うむ。それではアル、私は帰るがもう二度とふざけた国政をしないように。」



――宰相執務室

「ゲイト、陛下の件だが、アルカディア様にしっかり絞ってもらったから安心しなさい。」
「そうでしたか。ありがとうございます父さま。」
「はははは。陛下はアルカディア様の前では頭が上がらないようだな。」
「当然でしょう?あの方は原三神教の主神様なのですから!」ドヤァ……!
「ああ、そうだな。」……うーん……本当に大丈夫かなぁ……?


そして数週間後。

「はーやれやれやっと終わったー!よし!今日は何しようかなー♪」

ピローピロー
(ん?無線か。)

『よっ!こちらアザル。調子どうだ?』
「アザルさん!こちらゲイト。元気にしてましたか?」
『ああ!最近ずっと魔界に出張させられているが俺は元気だぞー』
「へぇ~そうなんですかー。僕も行ってみたいなぁ〜」ニコニコ
『おい!?聞いてたか今の会話!』
「えっ?なんのことでしょうか?よく聞こえなかったもので。」ニコッ

〜数分後〜

「というわけで僕はあざるさんのいる魔界に行きたいと思いまs(ry」

「待て待て待て待て!!」(通信外からのツッコミ

『ちげえ!そんな話じゃねえ!!』
「……ふぅ……危ないところでした……。危うくアザルさん洗脳されるところだった……」ボソッ
『おぃっ!!!きこえてるかんねぇ!!ゲ~イ~ト~?』
「ひっ……す、すいません……」
『まったく。とりあえず仕事あるから通信切るなー。また話そうぜー!こちらアザル。通信終了!』

「……」
「アザルとつうしんしていたんかい?」
「はい、父さま。久しぶりに会話しました。」
「先程魔界に行くとか聞こえたのは気のせいか?」
「冗談ですのでお気になさらず……」
「本当だろうな……?お前は時々突拍子もないことを言うからな……。心配だよ……。」
「うっ……流石は父さまです。ちゃんと見ていらっしゃるのですね。」

「当たり前ではないか。それで、この書類はいつまでかかるのだ?」
「はい。あと1時間ほどで終わると思います。」
「そうか。私も手伝おう。」
「いえ、結構です。これは私の仕事なので!」
「……わかった……」シュン……

はあ……仕方のない奴め……。手伝ってやりたいが自分でやると言って聞かないのだからな。ここは親として我慢するとするか。
しかし、ここ数日様子がおかしい気がする。いつもなら何かしら言ってくるはずなのだが、それすら言わなくなった。私が知らないだけでかなり疲れているのか?だとしたら少し休みを取らせてあげるべきか? だが、休むといっても何をすれば良いのだろうか。……やはり、思いつかない……。

「……」

ううむ……一体何があったのだろうか。

「ゲイト」
「はい。」
「……お前は何を考えている?」
「……何も考えておりませぬ。」
「……嘘を言ってはいけない。お前は今、昔のように悩んでいる。家族には隠し事は無しだと言ったはずだが?何故相談しない。それともこれでも私は信用に値しないと申すか?」ギロッ……!
「そっ……それは違います父さま!」ガタッ…………ガタタ……

ふぅ……。焦った顔しているな……少し意地悪しすぎたか……?……しかし これぐらいのことをしなければ正直に打ち明けてくれないだろうな。……さて。次はどうしようか?

「ゲイト、まずはその座り方をやめなさい。みっともなく見えるぞ。それに、目上の者に対する態度ではないな。もう一度言う。座れ。」
「うっ……わかりました。」スチャ……
「ふむ。素直でよろしい。では、質問を続けるとするか……ゲイトよ。私はお前の事がとても心配だ。だが、無理に聞き出そうとしてもお前は話すまい。……そうだな……これから毎日こうやって話してやろう。」
「えっ……?で、でm」
「ああ、もちろんただとは言わない。」
「……?」
「私に任せなさい。きっと満足させて見せよう。」ニッコリ……

(父さまがこういう顔をするときは大抵ろくでもないことを考えてるんだよなぁ……)……

「はぁ……これでもう何十回目になるんでしょうね……父さま……どうして私の心を読んでしまうのですか……?」ボソッ
「ふっ、まだまだだな。その程度ならすぐに分かる。もっと精進しろ。」ドヤァ!

(ぐぅ……本当に敵わない……)

「いい加減教えてくださいよー!僕も知りたいんですよー!僕の事なのにー!父さまはいじわるですー!!」
「そんなことを言われても困るのだが……。まあいいか……。お前が元気になったら話そうと思っていたんだが、ちょうどよかったかもしれん。」
「えっ?なんの話です?」

「まぁ待て。順を追って話そう。まず最初に、最近仕事の量が増えてないかと聞いてきたな。」
「……はい。」
「……実はそうなのだ……誰かさんが仕事を溜め込んでくれるおかげでな……」ジトー……
「……申し訳ございません……」
「……反省してくれたまえ……。それでな、最近は仕事量が多く、部下たちにも負担がかかっている。そこで考えた。帝国を効率化しようというわけだ。」
「どういうことでしょうか?」
「つまりな、帝国の経済面、軍事面でのトップである宰相と将軍と軍師を集める。そしてそれぞれの部門で人員を整理していくということだ。」

……あれ?なんか思ってたのと違うような……?

「あの……父さま?」
「なんだ?」
「い、いえ、なんでもありません……」
「そうか……。この案を実行に移すのには時間がかかる。まだ当分先だろう……。だが、確実に実行していくつもりだから安心してくれ。」